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桃太郎 海の神兵
(まる@「現代アニメ考」:1996年9月16日(たぶん^^;;))
 いきなりですが、戦争映画です。
 1944年の作品。監督は瀬尾光世、松竹の映画ですね。27万円=今のお金で4億円(!)ほどかけているそうです。セル画5万枚。手塚治虫も観ています。

 まず技術面から参りましょう。はっきりいってアニメ技術的にはすばらしいです。金をかけただけはあります。桃太郎や動物達の動きが非常に滑らかで、今の作品と比べても見劣りしません(ってもちろん白黒で、画質も悪いんですけどね)。手塚もこの映画を見て日本のアニメもここまで来たのかと感動したようです。

 ですが、これって戦争映画なんですよね。その点を追求しなくてはいけません。
 「桃太郎」ってことからわかると思いますが、鬼退治に行くんです。もちろん家来の犬、キジ、サルを連れて。登場動物は他にはうさぎ、カンガルー、ワニ、ゾウなどのかわいい系の動物と、後は「鬼」ですね。
 映画は家来の動物達(以下「家来動物」と表記)がそれぞれのふるさとに帰ってくるところから始まります。で、家族との触れ合いがあるのです(戦争映画には必ずあるパターン)。むろんその前に神社に拝礼してです。軍隊には訓練次第で誰でも入れるとか、家来動物はそーいった話をふるさとで弟や妹達にするのです。で、彼らは桃太郎といっしょには南国にいきます。そこにいた南国の動物達(先述したかわいい系の動物です。以下「南国動物」と表記)に対してやっぱり日本語教育をするんですね。南国動物は「あいうえお」を理解することができないので、歌を歌わせて覚えさせたりします。日本の植民地政策の姿がここいらへんに上手く描写されているようです。そしてそして軍事訓練をして、「鬼」(=白人。王様が統治していた島を奪った「鬼」として映画では差別的に表現されます)の住む島に戦闘機で行って、落下傘部隊が降下し、攻め込みます。トランプで遊びほうけていた「鬼」が勝てるはずなく、桃太郎らは勝ちまして、そこにいた「鬼」に降伏を迫りまして、まあ上手く行くのでした。
 これは単なる物語ではなく、史実に基づいて作られています。例えば、落下傘部隊が降下するのは1942年1月11日の「メナド降下大作戦」ですし、また降伏を迫る場面はマレー作戦におけるシンガポール陥落後の山下奉文とパーシバルとの会談をアニメで再現しているのです。
 まあ問答無用に戦争映画ですからねえ。題名だけとったって「海の神兵」ですから。まさに「皇軍(=天皇の軍隊)」としての日本軍がイメージされます。「鬼」を倒すという大義名分を出すとこなんかまさにそーですね。軍人勅諭で染み付けられていた天皇の威厳といいますか威信でしょうかそーゆーのを守るための天皇の道具としての日本「皇軍」だったわけです。それだから東南アジア諸国を「植民地支配」しているとかいうような認識は生まれてきませんし、また降伏するなんて「皇軍」としてふさわしくないですから、沖縄の人々がいくら死のうと沖縄戦を戦い続けたのです。それでいて昭和天皇ったらいわゆる「独白録」で沖縄戦はばかばかしい戦争だったとかへーきで言ってますからね。それに終戦の時に昭和天皇はいわゆる「聖断」で降伏に祭して「一条件説」を取るというよーに自らの保身=国体の維持だけを考えていたんですね。まったく困りもんですが、まあ話を戻しまして、登場動物を再び見てみましょう。まず南国動物は日本占領下の人々なわけですね。日本語を押し付けられていたのですが、彼らがかわいく描かれていました。そしてかわいい南国動物を統率し教育していく存在としてのりりしい家来動物=一般の日本人は南国動物と”同じ”動物であったわけで、同質性(しかも日本のを押し付ける)が強調されているのですね。。最後に両者を総括するものとしての桃太郎=天皇です。まさしく八紘一宇がうまく描かれているわけでした、ちゃんちゃん(^^)。

 うーん、戦争映画としては成功してますかね。
 まあ、こんな作品なのです(^^;;。




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